0. 概要

Slurm は、超大規模並列アプリケーションの運用を想定して開発されているジョブスケジューラで、この際に問題となる初期化処理(MPIの場合 MPI_Init )時間の増大等の大規模並列ジョブ特有の問題に対し、プラグインとして取り込む PMIx の以下機能(※1)で、これらの問題に対処しています。

  • Direct-connect
  • Direct-connect UCX
  • Direct-connect early wireup

※1)これら機能の詳細は、SC17で発表された以下のスライドで紹介されています。
https://slurm.schedmd.com/SC17/Mellanox_Slurm_pmix_UCX_backend_v4.pdf

ここでMPIのオープンソース実装である OpenMPI は、 PMIx をプラグインとして取り込んだ Slurm 環境で Slurm が提供するジョブ実行コマンド srun を使用してそのアプリケーションを実行する場合、 PRRTE を使用する起動方法( mpirun / mpiexec を起動コマンドに使用する方法)に対して、先の PMIx の初期化処理を含む以下の利点を享受することが出来ます。

  • 高並列アプリケーションを高速に起動することが可能
  • プロセスバインディングや終了処理等のプロセス管理を Slurm に統合することが可能
  • 精度の高いアカウンティング情報を Slurm に提供することが可能
  • Slurm クラスタ内のSSHパスフレーズ無しアクセス設定が不要

以上の利点を享受するべく本テクニカルTipsは、 OpenMPI のMPI並列アプリケーションを PMIx の大規模並列ジョブに対する利点を生かして実行することを念頭に、 PMIxUCX を取り込んだ Slurm 環境を構築し、初期化処理時間の効果を検証すべく、 Intel MPI Benchmarks PingPongのレイテンシに着目して比較・検証を実施します。

なお、本テクニカルTipsで使用する OpenMPI を構築する方法は、OCI HPCテクニカルTips集Slurm環境での利用を前提とするUCX通信フレームワークベースのOpenMPI構築方法 を参照してください。

1. 前提システム

本章は、本テクニカルTipsで解説する Slurm 環境構築手順の前提となるシステムを解説します。
本テクニカルTipsは、この前提システムが予め構築されており、このシステム上に Slurm 環境を構築する手順にフォーカスします。

前提システムは、以下4種類のサブシステムから構成されます。
また、必要に応じてこれらのサブシステムにログインするための踏み台となる、パブリックサブネットに接続するBastionノードを用意します。

サブシステム 使用するシェイプ OS ノード数 接続
サブネット
役割
Slurm
マネージャ
任意の仮想マシン
(※2)
Oracle Linux 8.10
(※6)
1 プライベート slurmctldslurmdbd が稼働するSlurm管理ノード
Slurm
クライアント
任意の仮想マシン
(※2)
Oracle Linux 8.10
(※6)
1 プライベート アプリケーション開発用フロントエンドノード
Slurm にジョブを投入するジョブサブミッションクライアント
計算ノード クラスタ・ネットワーク
対応ベアメタルシェイプ
(※3)
Oracle Linux 8.10
(※6)
2ノード以上
(※3)
プライベート
クラスタ・ネットワーク
slurmd が稼働するジョブ実行ノード
NFSサーバ -
(※4)
- 1 プライベート ジョブ投入ユーザのホームディレクトリをNFSでサービス(※5)

画面ショット

※2)本テクニカルTipsは、 VM.Optimized3.Flex を使用します。
※3)本テクニカルTipsは、 クラスタ・ネットワーク に接続された2ノードの BM.Optimized3.36 を使用します。
※4)ファイル・ストレージ やベア・メタル・インスタンスNFSサーバ等、任意の手法で構築されたNFSサーバです。NFSでサービスするファイル共有ストレージ構築方法は、 OCI HPCテクニカルTips集HPC/GPUクラスタ向けファイル共有ストレージの最適な構築手法 を参照ください。
※5)NFSサーバがサービスするジョブ投入ユーザのホームディレクトリは、Slurmクライアントと計算ノードがこれをマウントします。
※6)Oracle Linux 8.10ベースのHPC クラスタネットワーキングイメージ で、 OCI HPCテクニカルTips集クラスタネットワーキングイメージの選び方1. クラスタネットワーキングイメージ一覧 のイメージ No.12 です。
Slurmマネージャは、計算ノードにインストールする Slurm のRPMをビルドするため、Slurmクライアントは、計算ノードで実行するアプリケーションの開発環境の役割を担うため、計算ノードと同じOSを採用します。

また、本テクニカルTipsの各サブシステムのホスト名は、以下とします。
以降の章では、これらのホスト名を自身の環境に置き換えて使用して下さい。

サブシステム ホスト名
Slurmマネージャ slurm-srv
Slurmクライアント slurm-cli
計算ノード inst-aaaaa-x9
inst-bbbbb-x9

また、各サブシステムのセキュリティーに関するOS設定は、 firewalld を停止し、 SElinux をDisableにします。


2. 環境構築

2-0. 概要

本章は、既にデプロイされている 1. 前提システム で解説したシステム上で、 Slurm 環境を構築する手順を解説します。

Slurm のインストールは、多数の計算ノードに効率よくインストールする必要から、rpmbuildで作成するrpmパッケージによるインストール方法を採用します。

本テクニカルTipsは、以下のソフトウェアバージョンを前提とします。

  • Slurm : 24.11.0
  • OpenMPI : 5.0.6
  • PMIxOpenPMIx 5.0.4
  • UCX : OpenUCX 1.17.0

また、 Slurm のプロセス間通信の認証に munge 、ジョブのアカウンティング情報格納用RDBMSに MariaDB を使用します。

以上より、本章で解説する環境構築は、以下の手順に沿って行います。

  1. munge インストール・セットアップ
  2. MariaDB インストール・セットアップ
  3. OpenMPI インストール
  4. OpenPMIx インストール
  5. OpenUCX インストール
  6. Slurm rpmパッケージ作成
  7. Slurm rpmパッケージインストール・セットアップ
  8. Slurm 設定ファイル作成
  9. Slurm サービス起動・確認
  10. Slurm 利用に必要な環境変数設定

なお、各ソフトウェアと Slurm サービスは、以下のサブシステムにインストールします。

  Slurmマネージャ Slurmクライアント 計算ノード
munge
MariaDB - -
OpenPMIx
OpenUCX
OpenMPI -
slurmctld - -
slurmdbd - -
slurmd - -
Slurm
クライアントパッケージ

2-1. munge インストール・セットアップ

本章は、Slurmマネージャ、Slurmクライアント、及び全ての計算ノードに munge をインストール・セットアップします。

以下コマンドを対象となる全ノードのopcユーザで実行し、 munge プロセス起動ユーザを作成します。

$ sudo useradd -m -d /var/lib/munge -s /sbin/nologin -u 5001 munge

次に、以下コマンドを対象となる全ノードのopcユーザで実行し、 munge をインストールします。

$ sudo yum-config-manager --enable ol8_codeready_builder
$ sudo dnf install -y munge munge-libs munge-devel

次に、以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、 munge キーファイル( munge.key )を作成します。

$ sudo /usr/sbin/create-munge-key
Generating a pseudo-random key using /dev/urandom completed.
$ sudo ls -la /etc/munge
total 16
drwx------.   2 munge munge   23 Nov 24 14:34 .
drwxr-xr-x. 115 root  root  8192 Nov 24 14:33 ..
-r--------.   1 munge munge 1024 Nov 24 14:34 munge.key
$ 

次に、先にSlurmマネージャで作成した munge キーファイルを、Slurmクライアントと全ての計算ノードに同一パス・ファイル名でコピーします。
この際、ファイルのオーナーとパーミッションがSlurmマネージャのキーファイルと同じとなるよう配慮します。

次に、以下コマンドを対象となる全ノードのopcユーザで実行し、 munge サービスを起動します。

$ sudo systemctl enable --now munge.service

次に、以下コマンドを対象となる全ノードのopcユーザで実行し、 munge が全てのノードで正常に動作していることを確認します。

$ munge -n | unmunge | grep STATUS
STATUS:           Success (0)
$

2-2. MariaDB インストール・セットアップ

本章は、Slurmマネージャに MariaDB をインストール・セットアップします。

以下コマンドをopcユーザで実行し、 MariaDB をインストールします。

$ sudo dnf install -y mariadb-server mariadb-devel

次に、 MariaDB の設定ファイル( mariadb-server.cnf )の[mysqld]フィールドに以下の記述を追加します。

$ sudo diff /etc/my.cnf.d/mariadb-server.cnf_org /etc/my.cnf.d/mariadb-server.cnf
20a21,22
> innodb_buffer_pool_size=4096M
> innodb_lock_wait_timeout=900
$

次に、以下コマンドをopcユーザで実行し、 MariaDB サービスを起動します。

$ sudo systemctl enable --now mariadb

次に、 MariaDB のデータベースに以下の登録を行うため、

  • データベース(slurm_acct_db)
  • ユーザ(slurm)
  • ユーザ(slurm)のパスワード
  • ユーザ(slurm)に対するデータベース(slurm_acct_db)への全権限付与

以下コマンドをopcユーザで実行します。
なお、 MariaDB に対して入力するコマンドは、 MariaDB のプロンプト( MariaDB [(none)]> )に続く文字列です。

$ sudo mysql
Welcome to the MariaDB monitor.  Commands end with ; or \g.
Your MariaDB connection id is 8
Server version: 10.3.39-MariaDB MariaDB Server

Copyright (c) 2000, 2018, Oracle, MariaDB Corporation Ab and others.

Type 'help;' or '\h' for help. Type '\c' to clear the current input statement.

MariaDB [(none)]> create database slurm_acct_db;
Query OK, 1 row affected (0.000 sec)

MariaDB [(none)]> create user 'slurm'@'localhost' identified by 'SLURM';
Query OK, 0 rows affected (0.000 sec)

MariaDB [(none)]> set password for slurm@localhost = password('passcord');
Query OK, 0 rows affected (0.000 sec)

MariaDB [(none)]> grant all on slurm_acct_db.* TO 'slurm'@'localhost';
Query OK, 0 rows affected (0.000 sec)

MariaDB [(none)]> FLUSH PRIVILEGES;
Query OK, 0 rows affected (0.000 sec)

MariaDB [(none)]> Ctrl-C -- exit!
Aborted
$

なお、コマンド中の passcord は、自身の設定するパスワードに置き換えます。

次に、以下コマンドをopcユーザで実行し、先に登録したデータベースとユーザが正しく登録されていることを確認します。

$ mysql --user=slurm --password=passcord slurm_acct_db -e 'show databases;'
+--------------------+
| Database           |
+--------------------+
| information_schema |
| slurm_acct_db      |
+--------------------+
$

なお、コマンド中の passcord は、自身の設定したパスワードに置き換えます。

2-3. OpenMPIインストール

OCI HPCテクニカルTips集Slurm環境での利用を前提とするUCX通信フレームワークベースのOpenMPI構築方法 に従い、Slurmクライアントと全ての計算ノードに OpenMPI をインストールします。
これにより、これらのノードに OpenPMIxOpenUCX もインストールされます。

2-4. OpenPMIxインストール

本章は、Slurmマネージャに OpenPMIx をインストールします。

以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、 OpenPMIx/opt ディレクトリにインストールします。
なお、makeコマンドの並列数は当該ノードのコア数に合わせて調整します。

$ sudo dnf install -y ncurses-devel openssl-devel gcc-c++ gcc-gfortran
$ cd ~; wget https://github.com/libevent/libevent/releases/download/release-2.1.12-stable/libevent-2.1.12-stable.tar.gz
$ tar -xvf ./libevent-2.1.12-stable.tar.gz
$ cd libevent-2.1.12-stable; ./configure --prefix=/opt/libevent
$ make -j 36 && sudo make install
$ cd ~; wget https://download.open-mpi.org/release/hwloc/v2.11/hwloc-2.11.2.tar.gz
$ tar -xvf ./hwloc-2.11.2.tar.gz
$ cd hwloc-2.11.2; ./configure --prefix=/opt/hwloc
$ make -j 36 && sudo make install
$ cd ~; wget https://github.com/openpmix/openpmix/releases/download/v5.0.4/pmix-5.0.4.tar.gz
$ tar -xvf ./pmix-5.0.4.tar.gz
$ cd pmix-5.0.4; ./configure --prefix=/opt/pmix --with-libevent=/opt/libevent --with-hwloc=/opt/hwloc
$ make -j 36 && sudo make install

2-5. OpenUCXインストール

本章は、Slurmマネージャに OpenUCX をインストールします。

以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、 OpenUCX をインストールします。
なお、makeコマンドの並列数は当該ノードのコア数に合わせて調整します。

$ cd ~; wget https://github.com/openucx/ucx/releases/download/v1.17.0/ucx-1.17.0.tar.gz
$ tar -xvf ./ucx-1.17.0.tar.gz
$ cd ucx-1.17.0; ./contrib/configure-release --prefix=/opt/ucx
$ make -j 36 && sudo make install

2-6. Slurm rpmパッケージ作成

本章は、Slurmマネージャでrpmパッケージを作成します。

以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、前提rpmパッケージをインストールします。

$ sudo dnf install -y rpm-build pam-devel perl readline-devel autoconf automake

次に、以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、 Slurm rpmパッケージを作成します。

$ cd ~; wget https://download.schedmd.com/slurm/slurm-24.11.0.tar.bz2
$ rpmbuild --define '_prefix /opt/slurm' --define '_slurm_sysconfdir /opt/slurm/etc' --define '_with_pmix --with-pmix=/opt/pmix' --define '_with_ucx --with-ucx=/opt/ucx' -ta ./slurm-24.11.0.tar.bz2

作成されたパッケージは、以下のディレクトリに配置されるので、これらの全ファイルを他のサブシステムにコピーします。

$ ls -1 ~/rpmbuild/RPMS/x86_64/
slurm-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-contribs-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-devel-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-example-configs-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-libpmi-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-openlava-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-pam_slurm-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-perlapi-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-sackd-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-slurmctld-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-slurmd-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-slurmdbd-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
slurm-torque-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
$

2-7. Slurm rpmパッケージインストール・セットアップ

本章は、先に作成した Slurm rpmパッケージを各サブシステムにインストールし、必要なセットアップ作業を実施します。

以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、Slurmマネージャに必要な Slurm rpmパッケージのインストール・セットアップを行います。

$ cd ~/rpmbuild/RPMS/x86_64
$ sudo rpm -ivh ./slurm-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-slurmctld-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-slurmdbd-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-perlapi-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
$ sudo useradd -m -d /var/lib/slurm -s /bin/bash -u 5000 slurm
$ sudo mkdir /var/spool/slurmctld; sudo chown slurm:slurm /var/spool/slurmctld
$ sudo mkdir /var/spool/slurmd; sudo chown slurm:slurm /var/spool/slurmd
$ sudo mkdir /var/log/slurm; sudo chown slurm:slurm /var/log/slurm
$ sudo mkdir /opt/slurm/etc; sudo chown slurm:slurm /opt/slurm/etc
$ sudo su - slurm
$ echo "export PATH=\$PATH:/opt/slurm/sbin:/opt/slurm/bin" | tee -a ~/.bash_profile
$ echo "export MANPATH=\$MANPATH:/opt/slurm/share/man" | tee -a ~/.bash_profile
$ source ~/.bash_profile

次に、以下コマンドを全ての計算ノードのopcユーザで Slurm rpmパッケージをコピーしたディレクトリで実行し、計算ノードに必要な Slurm rpmパッケージのインストール・セットアップを行います。

$ sudo dnf install -y mariadb-devel
$ sudo rpm -ivh ./slurm-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-slurmd-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-perlapi-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
$ sudo useradd -m -d /var/lib/slurm -s /bin/bash -u 5000 slurm
$ sudo mkdir /var/spool/slurmd; sudo chown slurm:slurm /var/spool/slurmd
$ sudo mkdir /var/log/slurm; sudo chown slurm:slurm /var/log/slurm
$ sudo mkdir /opt/slurm/etc; sudo chown slurm:slurm /opt/slurm/etc

次に、以下コマンドをSlurmクライアントのopcユーザで Slurm rpmパッケージをコピーしたディレクトリで実行し、Slurmクライアントに必要な Slurm rpmパッケージのインストール・セットアップを行います。

$ sudo dnf install -y mariadb-devel
$ sudo rpm -ivh ./slurm-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm ./slurm-perlapi-24.11.0-1.el8.x86_64.rpm
$ sudo useradd -m -d /var/lib/slurm -s /bin/bash -u 5000 slurm
$ sudo mkdir /opt/slurm/etc; sudo chown slurm:slurm /opt/slurm/etc

2-8. Slurm設定ファイル作成

本章は、以下3種類の Slurm 設定ファイルを作成し、これらを各サブシステムの /opt/slurm/etc ディレクトリに配布します。
この際、これらファイルのオーナーユーザ・オーナーグループを slurm とします。
また、 slurmdbd.conf のパーミッションを 600 に設定します。

  • slurm.conf(全てのサブシステム)
  • slurmdbd.conf(Slurmマネージャ)
  • mpi.conf(Slurmマネージャ)

[ slurm.conf ]

ClusterName=sltest
SlurmctldHost=slurm-srv
AuthType=auth/munge
PluginDir=/opt/slurm/lib64/slurm
SchedulerType=sched/backfill
SelectType=select/linear
SlurmUser=slurm
SlurmctldPort=7002
SlurmctldTimeout=300
SlurmdPort=7003
SlurmdSpoolDir=/var/spool/slurmd
SlurmdTimeout=300
SlurmctldLogFile=/var/log/slurm/slurmctld.log
SlurmdLogFile=/var/log/slurm/slurmd.log
SlurmdDebug=3
StateSaveLocation=/var/spool/slurmd
SwitchType=switch/none
AccountingStorageType=accounting_storage/slurmdbd
AccountingStorageHost=slurm-srv
AccountingStoragePort=7004
MpiDefault=pmix
NodeName=DEFAULT CPUs=72 Boards=1 SocketsPerBoard=2 CoresPerSocket=18 ThreadsPerCore=2 RealMemory=500000 TmpDisk=10000 State=UNKNOWN
NodeName=inst-aaaaa-x9,inst-bbbbb-x9
PartitionName=sltest Nodes=ALL Default=YES MaxTime=INFINITE State=UP
TaskPlugin=task/affinity

なお、 SlurmctldHostAccountingStorageHost 、及び NodeName の設定値は、自身の環境に合わせて修正します。
また、計算ノードのSMTが無効化されている場合は、 NodeName=DEFAULT で始まる行を以下に変更します。

NodeName=DEFAULT CPUs=36 Boards=1 SocketsPerBoard=2 CoresPerSocket=18 ThreadsPerCore=1 RealMemory=500000 TmpDisk=10000 State=UNKNOWN

[ slurmdbd.conf ]

ArchiveEvents=yes
ArchiveJobs=yes
ArchiveResvs=yes
ArchiveSteps=no
ArchiveSuspend=no
ArchiveTXN=no
ArchiveUsage=no
AuthType=auth/munge
AuthInfo=/var/run/munge/munge.socket.2
DbdHost=slurm-srv
DbdPort=7004
DebugLevel=info
PurgeEventAfter=1month
PurgeJobAfter=12month
PurgeResvAfter=1month
PurgeStepAfter=1month
PurgeSuspendAfter=1month
PurgeTXNAfter=12month
PurgeUsageAfter=24month
LogFile=/var/log/slurm/slurmdbd.log
PidFile=/var/run/slurmdbd/slurmdbd.pid
SlurmUser=slurm
StorageType=accounting_storage/mysql
StorageUser=slurm
StoragePass=passcord
StorageLoc=slurm_acct_db

なお、 DbdHostStoragePass の設定値は、自身の環境に合わせて修正します。

[ mpi.conf ]

PMIxDirectConn=true
PMIxDirectConnEarly=true
PMIxDirectConnUCX=true
PMIxNetDevicesUCX=mlx5_2:1

2-9. Slurmサービス起動・確認

本章は、 Slurm の各systemdサービスを対象のサブシステムで起動します。

以下コマンドを全ての計算ノードのopcユーザで実行し、 slurmd を起動します。

$ sudo systemctl enable --now slurmd

次に、以下コマンドをSlurmマネージャのopcユーザで実行し、 slurmdbdslurmctld を起動します。

$ sudo systemctl enable --now slurmdbd
$ sudo systemctl start slurmctld

slurmctld は、全ての計算ノードの slurmd 起動完了後に起動する必要があるため、手動起動を想定して自動起動設定は行いません。

次に、以下コマンドをSlurmマネージャのslurmユーザで実行し、全ての計算ノードがアイドルになっていることを確認します。

$ sinfo
PARTITION AVAIL  TIMELIMIT  NODES  STATE NODELIST
sltest*      up   infinite      2   idle inst-aaaaa-x9,inst-bbbbb-x9
$

次に、以下コマンドをSlurmマネージャのslurmユーザで実行し、 PMIx が利用可能になっていることを確認します。

$ srun --mpi=list
MPI plugin types are...
    none
    cray_shasta
    pmi2
    pmix
specific pmix plugin versions available: pmix_v4
$

2-10. Slurm利用に必要な環境変数設定

以下コマンドをSlurmクライアントのジョブ投入ユーザで実行し、 Slurm を利用するための環境変数を設定します。

$ echo "export PATH=\$PATH:/opt/slurm/sbin:/opt/slurm/bin" | tee -a ~/.bash_profile
$ echo "export MANPATH=\$MANPATH:/opt/slurm/share/man" | tee -a ~/.bash_profile

3. 稼働確認

本章は、構築した Slurm 環境の稼働確認と PMIx の効果を確認するため、ジョブ投入ユーザで Intel MPI Benchmarks を実行するバッチジョブを srun で起動する場合と mpirun で起動する場合の2種類実行し、その結果を比較します。
またこのジョブの終了後、そのアカウンティング情報を取得できることを確認します。

srun を利用する場合( srun.sh )と mpiexec を利用する場合( mpirun.sh )で、以下のようにIntel MPI Benchmarks を実行する2種類のジョブスクリプトをジョブ投入ユーザのホームディレクトリ直下に作成します。

[ srun.sh ]

#!/bin/bash
#SBATCH -p sltest
#SBATCH -n 2
#SBATCH -N 2
#SBATCH -J ping_ping
#SBATCH -o stdout.%J
#SBATCH -e stderr.%J
export UCX_NET_DEVICES=mlx5_2:1
srun /opt/openmpi-5.0.6/tests/imb/IMB-MPI1 -msglog 28:28 pingpong

[ mpirun.sh ]

#!/bin/bash
#SBATCH -p sltest
#SBATCH -n 2
#SBATCH -N 2
#SBATCH -J ping_ping
#SBATCH -o stdout.%J
#SBATCH -e stderr.%J
export UCX_NET_DEVICES=mlx5_2:1
mpirun -n 2 -N 1 /opt/openmpi-5.0.6/tests/imb/IMB-MPI1 -msglog 28:28 pingpong

次に、以下コマンドをSlurmクライアントのジョブ投入ユーザで実行し、バッチジョブの投入とその結果確認を行います。

$ cd ~; sbatch srun.sh
Submitted batch job 3
$ grep -A 2 usec stdout.3
       #bytes #repetitions      t[usec]   Mbytes/sec
            0         1000         1.47         0.00
    268435456            1     21925.54     12243.05
$ sbatch mpirun.sh
Submitted batch job 4
$ grep -A 3 usec stdout.4
       #bytes #repetitions      t[usec]   Mbytes/sec
            0         1000         1.67         0.00
    268435456            1     21955.08     12226.58
$

この結果より、 srun を利用することでMPI通信の初期化処理に要する時間が短縮され、レイテンシが 0.2 μ秒 改善されていることがわかります。

次に、以下コマンドをSlurmクライアントのジョブ投入ユーザで実行し、終了したジョブのアカウンティング情報を取得できることを確認します。

$ sacct -j 3 -o JobID,User,AllocCPUS,Start,End
JobID             User  AllocCPUS               Start                 End 
------------ --------- ---------- ------------------- ------------------- 
3                usera         72 2024-06-19T21:18:21 2024-06-19T21:18:23 
3.batch                        36 2024-06-19T21:18:21 2024-06-19T21:18:23 
3.0                            72 2024-06-19T21:18:22 2024-06-19T21:18:23 
$

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