はじめに

Autonomous Databaseのデプロイメント方式にはADB-S(Serverless/共有型)とADB-D(Dedicated/専有型)の2つがあります。

Oracle Databaseのデプロイメント方式

ADB-DではインフラストラクチャのExadataをお客様が専有して利用することができます。
ADB-SもADB-DもAutonomous Databaseの特長である高性能・高可用性・高いセキュリティという点は同じですが、ADB-DではExadataを専有することにより「高度な分離性」と「運用ポリシーのカスタマイズ」が可能となります。

ADB-D

ADB-Dは複数の層で構成されており、それぞれ独立性が確保されています。したがって、どの層でもワークロードを分離させることができるとともに、層別に管理者のロールをわけて責任境界を明確化することができます。運用ポリシーについても、各層をそれぞれどのようにプロビジョニング・構成・メンテナンスするかをユーザ側で制御することが可能です。

ADB-Dにおける管理の領域は、OracleではPDBのレイヤを境界として「フリート管理者」および「データベース管理者」で分けることを推奨しています。

このような特長から、ADB-Dは、複数のADBを利用するような大規模なシステムや、セキュリティ上の制約によって他のお客様との同居が許されないようなシステムに適しています。 また、ADB-Dはクラウド(OCI)だけでなく、お客様データセンターに配置したCloud@Customer(C@C)でサービスを利用することが可能です。 データをパブリッククラウドに持ち出すことができない場合や、アプリケーションからのネットワークレイテンシが問題となるようなお客様はADB-C@Cの選択ができます。

本チュートリアルでは、OCI上にADB-Dのデプロイメントを行います。

目次

所要時間 : 約6時間程程度 ※プロビジョニング時間を含みます


1. 環境を作成してみよう

ADB-Dは次の4つの層で構成されます。

  • Autonomous Database (ADB)
    • Oracle Databaseのプラガブル・データベース
  • Autonomous Container Database (ACD)
    • Oracle Databaseのコンテナ・データベース
  • Autonomous VM Cluster(AVM)
    • ネットワークおよびVMクラスタ
  • Exadata Infrastructure(EI)
    • 基盤となるOracle Exadata


ADB-Dの構成


手順は次の通りです。 本チュートリアルではコンパートメントおよびユーザグループ・ポリシーの設定は構成済みであるとし、赤字で記載された項目を実施します。

ADB-Dのセットアップ

1-1. ネットワーク設定

ADB-Dを配置するネットワーク環境を作成します。
本チュートリアルではネットワークの構成は次のような構成にします:

ネットワーク構成

仮想クラウドネットワークの作成方法についての詳細は クラウドに仮想ネットワーク(VCN)を作る を参照ください。

メニューからネットワーキング仮想クラウド・ネットワークを選択肢、VCNウィザードの起動をクリックします。

VCNウィザード

インターネット接続性を持つVCNの作成を選択し、設定項目は次の通り入力します。

ウィザードでの入力項目
基本情報 VCN名 任意
コンパートメント 任意
VCNとサブネットの構成 VCN CIDRブロック 10.2.0.0/16
パブリック・サブネットCIDRブロック 10.2.0.0/24
プライベート・サブネットCIDRブロック 10.2.1.0/24


VCNの作成

次に、作成した仮想クラウドネットワークのセキュリティ・リストに次のルールを追加します。
本チュートリアルではプライベート・サブネットにADB-Dを立て、パブリック・サブネットの仮想マシンからアクセスすることを想定しています。

セキュリティ・リストに追加
サブネット CIDR ルール
プライベート・サブネット 10.2.1.0/24 イングレス・ルール
・プライベート・サブネット内のノード間のすべての通信を許可(AVM作成に必要)
・パブリック・サブネットからDBリスナーポート1521の通信を許可(DBへの接続)
・パブリック・サブネットからhttpsポート443の通信を許可(Database Actions/APEX)
・(必要に応じて)TCPS用のポート2484、ONS用のポート6200の通信を許可
エグレス・ルール
・プライベート・サブネット内のアウトバウンド通信を全て許可
・パブリック・サブネットへのアウトバウンド通信をすべて許可
パブリック・サブネット 10.2.0.0/24 イングレス・ルール
・インターネットからsshポート22の通信を許可
・インターネットからhttpsポート443の通信を許可
エグレス・ルール
・インターネットへのすべてのアウトバウンド通信を許可


セキュリティリスト

1-2. Exadata Infrastructureの作成

Exadata Infrastructure (EI)を作成します。 メニューからOracle DatabaseAutonomous Databaseをクリックします。専用インフラストラクチャの項目からExadata Infrastructureを選択し、Exadata Infrastructureの作成をクリックします。

EIの作成

Exadata Infrastructureの作成で必要な項目を入力します。
設定項目は次の表を参考にしてください。

Exadata Infrastructureでの入力項目
基本情報の指定 コンパートメントの選択
Exadata Infrastructureリソースを作成するコンパートメントを選択
任意
表示名
リソースを識別するための名称
一意である必要はありません。
任意
例:Exadata-Infra1
可用性ドメインの選択
リソースを配置する可用性ドメインを選択
任意
Exadataシステム・モデルの選択 シェイプの選択
割り当てるOracle Exadata Database Machineのタイプを選択
モデルとその構成に関する容量についての詳細な情報はこちら
例:
X8-2
X9-2
システム構成の選択
固定シェイプ・システムの場合、Quater/Half/Fullから選択します
エラスティック構成の場合はデータベース・サーバーとストレージ・サーバーの数を指定します
例:
固定シェイプの場合:Quarter ラック
エラスティック構成の場合:データベース・サーバー2、ストレージサーバー3


EIのプロビジョニング

入力完了後、Exadata Infrastructureの作成をクリックするとプロビジョニングが始まります。
EXAのアイコンが緑色になったらプロビジョニング完了です。プロビジョニングには約20秒程かかります。(2023/1時点)

EIホーム.png

EIはExaDB-DとADB-Dで共通のインフラストラクチャです。同じEIにExaDB-DのVMとADB-DのAVMを作成することができます。

1-3. Autonomous Exadata VMクラスタの作成

作成したEI上にAVMクラスタを作成します。
Autonomous Datbaseの専用インフラストラクチャの項目からAutonomous Exadata VMクラスタを選択し、Autonomous Exadata VMクラスタの作成をクリックします。

AVMの作成

Autonomous Exadata VMクラスタの作成で必要な項目を入力します。
設定項目は次の表を参考にしてください。

Autonomous Exadata VMクラスタ作成画面での設定項目
基本情報の指定 コンパートメントの選択
Autonomous Exadata VMクラスタを作成するコンパートメントを選択
任意
表示名
リソースを簡単に識別できるようにする名称
任意
例:AVMCluster1
Exadataインフラストラクチャの選択 Autonomous Exadata VMクラスタを作成するExadata Infrastructureを選択 作成済みのEIを選択
Autonomous VMクラスタ・リソースの構成 コンピュート・モデルの選択:
ECPUかOCPUを選択
ただしOCPUは今後廃止が予定されています(2024/8時点、詳細はMOS Doc ID2998755.1をご確認ください)
ECPU
DBサーバーの選択 任意
1VM当たりのOCPU/ECPU数 任意
Autonomous Container Databaseの最大数 任意
CPU当たりのデータベース・メモリー 任意
データベース・ストレージ(TB) 任意
ネットワーク構成の設定 仮想クラウドネットワークの選択 作成済みのVCNを選択
サブネットの選択 イングレス・ルールを設定したプライベート・サブネットを選択
メンテナンスの詳細の指定: メンテナンスのスケジュールを構成
AVMクラスタ作成後にも変更が可能
任意
ライセンス・タイプの選択 「ライセンス持ち込み」および「ライセンス込み」より選択 ライセンス持ち込み(BYOL)
拡張オプション タイム・ゾーン、リスナーのポート、タグのオプション設定 任意


AVMのプロビジョニング

入力完了後、Exadata Exadata VMクラスタの作成をクリックするとプロビジョニングが始まります。
AVMのアイコンが緑色になったらプロビジョニング完了です。プロビジョニングには約4時間半程かかります。(2023/1時点)

AVMのホーム

1-4. Autonomous Container Databasesの作成

作成したAVM上に、コンテナ・データベースを作成します。
作成したAVMの詳細画面から、Autonomous Container Databaseの作成をクリックします。

ACDの作成

Autonomous Container Databaseの作成で必要な項目を入力します。
設定項目は次の表を参考にしてください。

Autonomous Container Database作成画面での設定項目
基本情報の指定 コンパートメントの選択
Autonomous Container Databaseを作成するコンパートメントを選択
AVMを配置したコンパートメントを選択
表示名
リソースを簡単に識別できるようにする名称
任意
例:ACD1
イメージの選択
ベース・イメージまたは作成済みのソフトウェア・イメージを選択
ベース・イメージからの選択の場合は続けてバージョンを選択

ベース・イメージからのバージョンの選択
19.24.0.1.0
Autonomous Data Guardの構成 Autonomous Data Guardを有効化して、プライマリおよびスタンバイのACDを作成 任意
自動メンテナンスの構成 必要に応じて、メンテナンスの種類またはスケジュールを構成 任意
バックアップの構成 自動バックアップの有効化の選択とバックアップ保存期間の指定
自動バックアップの有効化をチェック
15日間
拡張オプション データベース・リソース管理、ネット・サービス・アーキテクチャ、暗号化キー、タグ付けのオプション設定 任意


ACDのプロビジョニング

入力完了後、Autonomous Container Databaseの作成をクリックするとプロビジョニングが始まります。
ACDのアイコンが緑色になったらプロビジョニング完了です。プロビジョニングには約30分程かかります。(2023/1時点)

ACDのホーム

1-5. Autonomous Databaseの作成

いよいよADBインスタンスを作成します。作成したACD上にADBを作成します。
Autonomous Databaseの作成をクリックします。

ADBの作成

Autonomous Databaseの作成で必要な項目を入力します。
設定項目は次の表を参考にしてください。
なお、Autonomous Databaseの作成方法については 101: ADBインスタンスを作成してみよう で詳細に説明していますので、重複する部分の説明は割愛します。

Autonomous Database作成画面での設定項目
基本情報の指定 コンパートメントの選択 任意
表示名 任意
例:ATPD1
データベース名 任意
例:ATPD1
ワークロード・タイプの選択 データ・ウェアハウス(ADW)またはトランザクション処理(ATP)からワークロード・タイプを選択 例:
トランザクション処理
デプロイメント・タイプの選択 サーバーレス(ADB-S)または専用インフラストラクチャ(ADB-D)から選択 専有インフラストラクチャ
Autonomous Container Databaseの選択 Autonomous Data Guard対応のAutonomous Container Database:
Autonomous Data Guardを使用する場合はチェック
任意
Autonomous Container Databaseの選択:
ADBを作成するACDを作成済みのACDから選択
作成済みのACDを選択する
データベースの構成 Autonomous Database for Developers:
無料の開発者向けADBの作成の場合にチェック(ECPUのみ)
任意
OCPU/ECPU数 任意
OCPU/ECPU自動スケーリングの有効化 任意
ストレージ 任意
管理者資格証明の作成 ユーザ名 ADMIN
パスワード 任意
例:Welcome12345#
ネットワーク・アクセスの構成 アクセス制御リストの編集:
特定のIPアドレスのクライアントのみにデータベースへのアクセスを制限できます。
任意
通知、お知らせ用の連絡先 連絡先用の電子メールを設定 任意
拡張オプション 文字セット、データベース・インメモリー、タグのオプション設定 任意


ADBのプロビジョニング

入力完了後、Autonomous Databaseの作成をクリックするとプロビジョニングが始まります。
ADBのアイコンが緑色になったらプロビジョニング完了です。プロビジョニングには約5分程かかります。(2023/1時点)

ADBのホーム


2. 作成したADBに接続してみよう

作成したADBへSQL*Plusで接続を行います。
作成したADBの詳細画面を表示し、「DB接続」をクリックすると接続に必要な情報を入手できます。

データベース接続

接続を行う仮想マシンの設定は204: 開発者向け仮想マシンのセットアップ方法を参照ください。TLSがついている接続サービスはADB-Sに接続する場合と同様の方法で接続ができます。またTLSがついていない接続サービスはウォレットなしで接続することが可能です。


3. 補足

ADB-Dの課金について

ADB-DはExadataの筐体を専有してご利用いただくことになるので、Exadata Infrastructure分の課金が発生します。最低利用期間は48時間であり、Exadata Infrastructureを終了するまで課金が継続します。作成する際にはご注意ください。 次の表は、ADB-SとADB-Dの課金の違いについて記載したものです:

ADB-S
ADB-D
料金体系 OCPU/ECPU + Storage OCPU/ECPU + Infrastructure
課金単位 OCPU/ECPU:秒
Storage:秒
OCPU/ECPU:秒
Infrastructure:秒
最低利用期間 OCPU/ECPU:1分
Storage:1分
OCPU/ECPU:1分
Infrastructure:48時間
課金時間 OCPU/ECPU:起動している間
Storage:終了するまで
OCPU/ECPU:起動している間
Infrastructure:EIが終了するまで


自動メンテナンスの構成について

EI、AVM、ACDは四半期に一回自動メンテナンスが行われます。このメンテナンスのスケジュールは、ユーザによるスケジュールの指定と、システムによるスケジュールのいずれかを選択することができます。 スケジュールをカスタマイズする場合は、次の例のACDのメンテナンスの編集画面から分かる通り細かいスケジュールを設定できます。

ACDのメンテナンス

ローリング、非ローリングの選択はACDのみです。EI、AVMでは選択できません。

おわりに

本チュートリアルでは、1つのAVMクラスタに1つのACDを配置し、その上にPDBであるADBを配置するという最もシンプルな構成で作成しました。同様の手順で許可されるリソース範囲でAVM、ACD、ADBを複数作成することができます。


参考資料


以上で、この章は終了です。
次の章にお進みください。


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